むらよし農園

面白いことが書ければと。

あの頃に戻る川原

『 シュッ 』

 

 

 

背中にふりかかる香水

 

 

 

甘い香りに振り向く

 

 

「これでおんなじ匂いになれたね」

 

言葉が出ないほどにわしづかみにされた気がした。

 

 

 

 

 

はっ、

 

 

夢か。

 

なんて夢だ。爆発するかと思った。

 

 

 

 

夢うつつで仕事を終えた僕はY先輩に誘われご飯を食べに行った。

 

時刻は19時。

 

乾杯の時間だ。

 

場所は超安い焼肉店。いいのいいの。

平日のちょい飲みなんてこれくらいがいいの。

 

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焼肉食べてビール飲んで

 

焼肉食べてハイボール飲んで

 

焼肉食べてマッコリ飲んで

 

いつからか頼まなくなった『ライス』

大人になったもんだと思ったけどちょっとだけ寂しい。

 

焼肉で米をわしわしとかきこんでいたあの時にはもう戻れないのかな。

 

お酒とお米の両立が難しい僕には無理なのかも。

 

そう思っていると先輩が

 

「ライス大ください」

 

僕より小食な先輩がかましていた。

やるじゃん。あの時のまんまじゃん。

 

 

はてなブログ10周年特別お題「10年で変わったこと・変わらなかったこと

 

焼肉屋から出る。

時刻は21時。

 

夜風が涼しいのと思いのほか早い時間だったこともあり、少しだけ飲みなおそうという話になった。

 

どこにするかと考えながら歩いていると、川原沿いに出た。

 

今の家に引っ越してきた10年前から、ことあるごとに来ていたこの川原。

 

そうだ。久しぶりにここで飲みましょう。

 

 

めったに人の通らないこの場所は先輩の家から徒歩40秒のところにある。

そのため、大学時代、フリーター時代、ニート時代

 

ホントによく来ていた。

 

コンビニでお酒を買ってきて、川原に降りる階段に腰かけて乾杯をする。

 

 

10年前と同じポジショニング。同じ体勢。同じ風が吹いていた。

 

違うのは発泡酒からビールになったこと。

 

偉くなったもんだ。

 

一口飲むと一瞬で思い出してきた。

 

 

 

スロットで大勝ちした帰りに祝杯をあげたあの夜。

 

スロットで死ぬほど負けて、お金を持ち寄り酒を飲んだあの夜。

 

12時間以上パチンコ屋にいて、プラマイゼロで疲労困憊で酒をあおったあの夜。

 

 

ろくな思い出がねえな。

 

 

なつかしさに身を任せ、止めていたタバコを吸ってみた。

 

 

くらくらする頭に遠い記憶が蘇る。

 

金がなさ過ぎて『わかば』吸いながら明日はどの店に行きますかという相談をしていたこと。

 

その日打った台のビッグ中の歌をBGMにしんみり飲んでいたこと。

 

 

翌日、東京へ一緒に行く約束をしていた先輩が

「実はスロットで大負けして2000円しかないねん。」

 

と神妙な面持ちで告白してきたこと。

 

 

やはりろくな記憶は残っていない。

 

 

もしかしてろくな生活を送っていなかったのかな。

 

 

世の人はこのような歴史を黒歴史というだろう。

 

確かに決して褒められた生活ではないことは分かっている。

 

大学留年してたし

卒業しても就職してなかったし

死ぬほど金なかったし

スロッカスだったし

金ない二人で借金しあってたし

 

 

でも歴史に色なんてないでしょ?

 

今の自分を構成している大事な1ページには変わりない。

 

あのときの経験なくして今の僕はない。

 

 

そしてそんな日々を振り返りながら

 

「少しはマシな人間になったな~」

 

とタバコをふかす先輩の目はあのときのままだ。(先輩は今オンラインカジノに夢中)

 

 

川原でおじさんが二人で酒を飲んでいる様ははっきり言って情けないことは分かっている。

路上飲みと言われたらそれまでかもしれない。

 

 

でも

 

それでも

 

自分たちの青春の場面が蘇る場所。

 

昔の自分と並んで飲める場所。

 

たまにはいいじゃない。

迷惑かけないからさ。

 

 

思い出話にばかり花を咲かせるようにはなりたくないけど。

 

思い出すだけでなく、過去の自分と語る夜があってもいい。

 

そう感じた秋の夜。

 

 

 

 

P.S 数年ぶりに職質を受けました。

 

 

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