これまでのビワイチはこちらから↓↓
・思わぬ足止め
鹿の猛攻に耐え、尻痛攻略の糸口を見つけた僕らはまた深夜の道をいく。
琵琶湖の北から西にかけてのエリアはコンビニも少なく、寂しい道が続く。
そのため、コンビニの明かりを見つけるとついフラフラと吸い込まれてしまう。
コンビニに入るときも銀マットをお尻に入れてたままだったのでだいぶ変質者だが仕方ないだろう。
そこで水分補給とニコチン補給をする。
じんわりと暑い真夏の夜中。
冷たい炭酸とタバコの効果はバツグンだった。
2本目のタバコを吸っていると、後ろの駐車場の方で大きな声が上がる。
「やらかした」
後輩の声だ。
振り向くと、駐車場に倒れている後輩と
奇妙に折れ曲がって倒れてる自転車があった。
先輩と二人で駆け寄ると、後輩はバツの悪そうな顔をして
「ウィリーしてたらなんか壊れちゃいました。」
と言った。
マジかこいつ。
2人で10秒ほど唖然としていても後輩はヘラヘラしてるだけだった。
先輩がバッグから修理キットを持って来て修理を開始する。
どうやら、ウィリーをして前輪を上げたことで折り畳み自転車の折り畳み機能?が作動してしまい、きちんとした手順を踏まずに畳んだことでチェーンが外れて絡まったんだそう。
100対0で後輩が悪いじゃねーか。
夜中に何してんだよ。
先輩は手を真っ黒にしながら30分かけて自転車を修理した。
思わぬ足止めを食らってしまったが、先を行かねば。
・愚かすぎるジャックナイフ
次の休憩地点を20キロ先のコンビニに設定して出発することにした。
こんな感じで小刻みに休憩することが夜通し自転車を漕ぐ秘訣である。(普通しない)
自転車を無駄に壊し、足止めしたバツとして後輩に歌を歌わせていた。
誰もいない、車さえも通らない道を後輩が熱唱していた。
そのほとんどの曲がパチスロの曲ばかりだったので結局3人で歌ってた。
深夜に響く『轟けDREAM』はなかなか良かった。
そんなこんなで次のコンビニが見えてきた
やっと休憩できると思い駐車場に侵入したとき
「ジャックナイフ!!」という大声とともに
『ガシャーン』という大きな音が響いた。
嫌な予感しかしないし、まず間違いなく後輩がやらかしたのだが、恐る恐る振り返ると
横たわる後輩と、さっきと同じ状態で壊れてる自転車が目に飛び込んできた。
よし、こいつは今すぐ琵琶湖に沈めよう。
ヘラヘラしてる後輩を横目に、そう決意した僕と先輩であった。
先輩が自転車を修理している間
「なんなん?ジャックナイフって?」
さっきの叫び声が気になって、後輩に聞いてみた。
「自転車の前輪を止めて後輪を持ち上げる技です。」
ダメだ。こいつは。
・朝日は見えるか
またも30分かけて修理し、次の目的地へ向かう。
次に向かうのは『白鬚神社』である。
残り15キロほどなので1時間もせずに行けるだろう。時刻は2時すぎ、3時には着くはずだ。
後輩は何かにとり憑かれている可能性も高いのでちょうどいい。
午前3時、無事白鬚神社に到着する。
当たり前だが真っ暗だ。
しかしながら、月明かりに照らされた湖中の鳥居は神秘的で美しかった。
しばし腰かけ鳥居を眺める。
白鬚神社は湖に大きな鳥居があり、道路をはさんだ山手側に本殿がある。
僕らはその道路の端の方に座り込んでいた。
車も通らない。音もしない。
素敵な時間が流れ始める。
日の出まであと2時間もない。
このまま朝日を眺めようっていう寸法だ。
うまくいけばこんな風景が見られるらしい。
ヤバいでしょ。
こんな風景一生見ることないぞ。せっかく琵琶湖回ってるんだから見とこうぜ。
「ちょっと朝日まで長くないです?」
座って3分で後輩がつぶやく。
どうやらまだとり憑かれているようだ。
1時間も無駄にさせたテメェは黙ってろ。
さらに2分後
「お腹空きましたね」
1分後
「こっから20キロくらいに琵琶湖大橋があって、その近くに24時間のマックとかコンビニがありますね」
1分後
「区切りいいとこで橋を今日のゴールにして、マック買ってビールでも飲みません?」
40秒後
僕らは出発していた。
朝日に照らされた美しい鳥居よりも、ジャンクでパンチの効いたバーガーを喉を鳴らしながらビールで流し込む欲求のほうが数段上だった。
とり憑かれてるのはみんな一緒だ。
琵琶湖大橋までの20キロはなかなか過酷なものだった。
疲労はピーク。
ごまかしてた尻痛も銀マットではごまかせないほどになっていた。
それでも漕ぐ。
早く寝たい。
そして早くビールが飲みたい。
空がうっすら明るくなってきたころ
ようやく琵琶湖大橋の姿が目に入ってきた。
つづく