むらよし農園

面白いことが書ければと。

【 ビワイチ10 】最後のサイコロ

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・どこいってもするこた同じ

 

 

 

 

大津に到着した我々は、とりあえず大津駅に向かった。

 

ゴールしたが、この先の京都までの道のりを考えると誰もはしゃいだりは出来なかった。

 

 

 

大津駅近くの海鮮丼専門店『丼丸』で一人2個ずつ丼をテイクアウトした。

 

それをもって駅のロータリーのベンチで食べる。

 

汚らしい格好をした3人の男が一心不乱に丼をかき込んでる様子はさぞ気味が悪かっただろう。

 

この時食べた海鮮丼は宇宙一美味しかった。

疲れてるとか、お腹が空いてるからでは説明がつかないくらい美味しかった。

 

 

食べ終わってまったり一服していると、先輩が誰かと電話をし始めた。

 

電話の相手は自転車を貸してくれたT先輩である。

 

 

2分ほど話した後先輩が、

 

 

「Tが車で迎えに来てくれるって」

 

と言った。

 

 

 

 

正直大津にゴールした時の100倍うれしかった。

 

 

先輩の仕事が終わってからこっちに向かうそうなので、20時から21時になるという。

 

それまでの時間つぶしをしなければいけない。

 

現在の時刻は14時。

 

 

 

僕たちは琵琶湖を一周したんだぞ。

 

 

そんな誇りと喜びを胸に、近くのパチンコ屋へ入っていった。

 

 

 

・大勝負

 

 

こんなところまできても、やることは同じなんだな。

 

びわ湖を自転車で一周する。

 

そんな誰もがやれることではない(やりたがらない)偉業を達成した後に即パチンコ屋に行く。

この落差こそが勝利を呼び込むカギとなるはずだ。

 

 

後輩はほぼ所持金ゼロなので、僕らが少しの軍資金を渡して遊んでてもらう。

 

 

僕と先輩は真剣に台を選んでたまたま隣同士に座った。

 

 

選んだのは僕が「偽物語」、先輩は「黄門ちゃま」だ。

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もう一度打ちたい名機だ。

 

 

なんというか、ホントに予感はしてたが二人とも信じられないくらいの連チャンをする。

 

やはりびわ湖1周の効果はあったんだな。

 

 

後輩はどうだろうと、ホールを見回すと

 

 

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しっかり爆睡

 

余計な動きはせずに、爆睡することで自分の仕事を果たしていた。

 

 

いいぞ。今回の旅で一番いい働きをしている。

 

 

そのままT先輩が来るまで打ち切り、二人で大勝利を収めた。

 

意気揚々と先輩が待つ場所へと向かう。

 

 

 

先輩の車は思ってたよりも小さかった。

 

 

 

・大勝負再び

 

そういえばそうだった。

普通の乗用車だった。

 

多分だが、自転車3台と僕たち3人を乗せることは不可能だろう。

何でこんなことにも気付かなかったんだ。

 

 

絶望している僕と後輩をよそ目に先輩とT先輩は今回のビワイチについて楽しそうに話している。

 

 

するとT先輩が、

 

 

「自転車をきれいにパーツごとに分解してルーフに積めば余裕で乗るぞ」

 

 

と天使のようなことを言ってくれる。

さすが自転車屋さんは違うぜ。

 

 

そして、心底安堵し喜ぶ二人にこう続けた。

 

 

「どうやら今回は大事なことはサイコロが決めてたみたいだが、チャリを乗せるかどうかもサイコロで決めよう。」

 

 

 

言っている意味が分からない。

 

 

先輩は「いいねぇ」とアホみたいなこと言ってる。

 

 

 

どんな風にするのか聞くと、

 

 

・サイコロ一発勝負。

・1,2が出れば自転車3台乗せて僕らも車に乗って京都まで積んでってくれる。

・3,4が出れば自転車だけは積んで帰るが、自分たちは電車で京都に行く。

・5,6が出れば、自転車で京都まで帰る。

 

 

 

頭おかしい。

 

 

 

いやいやいや

 

 

なんで? 

 

 

ここまで来てもう自転車は乗れない。

 

僕らの自転車スイッチは今日の14時で完全に切れている。今さら乗れるはずない。

ましてや京都など無理中の無理。

 

 

 

最後の最後に最大の試練が訪れる。

 

 

サイコロを振るのはT先輩に決まった。

 

 

 

T先輩はこうなったら命を懸けて5か6を出すと、なぜか異様に気合が入っていた。

 

 

元々頭がおかしい人だとは思っていたがこれほどとは・・・

僕らは広いコンビニの駐車場で、T先輩が手にしてる小さなサイコロを凝視した。

 

「頼むから1か2,最低でも3,4を出してくれ。」

 

 

僕と後輩は土下座してるような格好で祈っていた。

 

 

先輩はというとよく分からない顔をしている。

 

なんなんだチクショウ。感情ないんか。

 

 

一方T先輩はサイコロを片手に祈りの舞を踊っていた。

 

 

くっ、狂ってやがる。

 

 

そして運命の時。

 

 

何か意味不明な呪文を唱えながらT先輩が高々とサイコロを放り投げる。

 

 

出た目は・・・・

 

 

 

『1』

 

 

 

勝った。

 

 

僕と後輩は勝利の雄たけびを上げる。

 

 

そしてその倍くらいのボリュームでT先輩が叫んでいた。

 

マジで狂人にもほどがある。

 

先輩はただヘラヘラしてた。サイコパスかよ。

 

 

・エンドロール

 

 

 

30分後

 

僕らは車に乗って京都を目指していた。

 

やっと終わる。

 

これでやっと終わるんだ。

 

 

 

 

疲れ果てていたが、充実の旅だった気がしてきた。

 

 

夜の京都、男4人を乗せた車は駆ける。

 

後部座席からキラキラと街の灯りが目に入る。

これで僕らの夏の冒険は終わりだ。

映画ならここでエンドロールだろう。

さぞかしいい曲で〆たいとこだが、T先輩の車から流れてきたのは

 

 

めざせモスクワ


www.youtube.com

 

なんというセンス。

 

しかしこの意味不明な旅の終わりに妙にマッチしていておかしかった。

 

 

 

さて、みんなでラーメンでも食いに行くか。

 

 

くわえタバコの先輩の提案にみな無言でうなずき

 

 

 

深夜営業のラーメン屋へ車を走らせた。

 

 

 

 

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